2024.4 月刊不動産フォーラム21 に掲載いただきました

 

これかららの団地リノベのあり方を問う。

築46年の名谷団地周辺では、行政の再開発が進む。その一環で神戸住環境整備公社は「子育て家族の新たな住まい方・暮らし方」と掲げ団地リノベのモデルハウスを企画、提案を募った。

これに対し、団地を多く手がけて来た弊社は「暮らしの質」にフォーカスした設計を提案。これまで、予算を優先させた結果カビや寒さに耐えられず短期間で退去する例を何度も見て来て「団地リノベのあり方」を追求する中で出した、一つの答えである。

玄関収納や脱衣所がない、結露が酷い、など団地特有の課題に着目し、壁断熱に加え、思い切って玄関と水回りの面積を1.5倍に拡大。小さな家族を想定し、個室は住み手が状況に応じて自由に使える様に余白を残した。

団地リノベを終の住処として選ぶ人は少ない。質の良いリノベをしておけば手放した後もきちんと流通し、空き家化を防げる。団地がしっかり住み継がれていく事を願い、官民連携ならではの発信を目指した。

公開日にはリノベを検討するさまざまな世代の人が訪れ、実物を肌で感じながら自身のリノベのイメージを膨らませた。

玄関を開けると県産材の板壁からふんわりと木の香りが漂い、すぐ横のウォークイン収納はベビーカーを置けるほど広い。

個室では室内窓越しに家族の気配を感じながら」在宅ワークができ、冬では暖房なしで過ごせる日も。室内干しが出来る広々とした水回り・脱衣所からは、周囲をぐるりと回れるキッチンにかけての動線がスムーズで、団地での快適な暮らしを約束する。

この部屋のコンセプトは「団地ぐるぐる」。数々の団地リノベを手がけてきた弊社が、断熱・家事動線・地産地消を軸に、団地リノベにおいて先行して来た「安くてユニーク」の価値観を、「暮らしの質」にシフトする事で、団地をどんどん住み継いでいきたいという思いでプロポーザルに提案。暮らしやすさを重視する主催者側に響き採用された。

想定ターゲットは子育て世帯だったが、実際には同団地に長年暮らす暮らす高齢の住民が見学に訪れることも多い。玄関収納や水回りの広さに感動し「いずれは息子が住むから」と同じ間取りでリノベ相談をいただくことも。

期せずして、空き家になる前にリノベによって住まいの質を高め、次の住み手に手に継ぐという動きも生まれつつある。

 

⬜︎物件概要

所在:兵庫県神戸市

築年月:1977年12月

構造:RC造

リノベーション面積:62.07平米

施工期間:2ヶ月

資料提供 株式会社フロッグハウス

※この物件は(一社)リノベーション協議会の「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2023」800万円未満の部最優秀賞受賞作品(株式会社フロッグハウス)です。

 

 

 

 

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