神戸市 石上さま邸

この家を買って本当によかった。
とことん悩んで決めたからこそ、今の暮らしが楽しい。

駅を出ると、昔ながらの商店や古い建物を活用した個性的なお店が立ち並び、地元のおじいちゃんから下校中の中学生、アーティスト然とした出で立ちの若者まで、暑い日差しの中をのんびりと歩く――。

神戸市垂水区・塩屋は、そんな雰囲気が魅力で、老若男女国籍問わずいろんな人がそれぞれに等身大の暮らしをしている印象を受けます。

この街を訪れたのは、梅雨の晴れ間の暑い午後。汗だくになり坂道を歩くこと約10分、山の上にそびえ立つ団地・塩屋住宅にたどり着きました。

海の見える最上階のお部屋で爽やかに迎えてくださったのは家主の石上さん。この家で、どんな暮らしをしているのでしょうか。

■DATA
住所:兵庫県神戸市
スタイル:団地リノベーション(63.37㎡、購入時築49年)
費用:約790万円(物件購入約310万円、リノベーション約480万円)
家族構成:ひとり暮らし
フロッグハウス担当者:清水大介

塩屋に移住して16年、思いがけず購入することに。

石上さんは、16年ほど前に姫路市から塩屋に移り住みました。

石上さん)前は、駅の近くの文化住宅みたいなちっちゃい賃貸アパートに住んでいました。畳で、渋くて落ち着く感じで、そこはそこですごく好きでした。

元々は友達が住んでいて、遊びに来た時にすごくいいところやなと思って「ここに住みたい!」って言ったんです。彼女が「私が出ていく時には知らせるわ」って言ってくれて、実際にそのタイミングで私が住むことになったんです。当時は姫路で働いていて、塩屋から通っていました。

住まいは気に入っていたものの、先のことを考えると水回りなどの設備に不安を覚えていた石上さんは、転居を考えはじめました。「やっぱり塩屋が好きだから、塩屋近辺で」と賃貸を探すも、住みたいと思える物件にはなかなか出会えずにいました。

そんなとき、友達から「買ったら?」と提案されたことが転機に。「買うなんて頭はなかった」という石上さんでしたが、勧められるままに探しはじめたところ、「神戸R不動産」のサイトで塩屋住宅のリノベーション事例を見つけ、「こんなに広いんや」「1回見てみようかな」と内覧を予約。それが、この物件との出会いでした。

(「前に住んでいた家からも海が見えて、景色が同じような感じなんですよ」と石上さん。)

課題は、風を遮るクローゼットを取り払えるか

一度見ただけで「買うなら絶対にこの部屋がいい!」と確信した石上さん。ところが1ヶ所だけ、気がかりがありました。

石上さん)北側の和室の畳がカビだらけだったんですよ。「ここめっちゃいいのに、どうしよう」って。でも、ベランダのある南側の部屋との間にあった大きなクローゼットを取っ払えば、風が抜けて絶対によくなるだろうなと妄想が広がったんです。それが叶うんだったら買おうと思いました。

すぐさま、R不動産の記事で「団地リノベーションが得意」と紹介されていたフロッグハウスのサイトをチェック。ナチュラルな雰囲気の施工例や低予算でできるというところに惹かれ、「一緒に見てもらえませんか?」と電話で相談しました。

同行して確認してもらったところ、クローゼットが取り払えることや、もう1箇所気になっていたカウンターキッチンも壁付けに変更できることがわかり、石上さんは購入を決意。物件購入とリノベーション工事のローンを一本化できたのも、フロッグハウスの魅力でした。

(奥がかつての和室。大きなクローゼットをなくすことで、風も光も抜ける快適な間取りになりました。)

内装は「迷ったら最初に戻る」の繰り返し

2020年10月、契約を終えるとすぐに着工となりました。年内の入居を目指し、工事期間は約2ヶ月間。打ち合わせが始まる前から、石上さんには「こんな風にしたい!」という内装のビジョンがあったといいます。

石上さん)何もないところがいいと思って。本当はリビングの壁を一面本棚にしたいなって思ったんです。それは予算的にかないませんでしたが、最初に「本棚だけあって他は何もない」って決めていたから、「迷ったらシンプルにいこう」って。迷うと変な方向に行きそうになるので、そのたびに最初に戻っていましたね。

内装の資材一つひとつを決めていくのは自分自身。「好きなものがはっきりしている」という石上さんですが、それでも床や壁など、面積の大きい箇所はとても悩んだそう。

中でも、家全体のナチュラルな雰囲気をつくり出しているオーク材の床は、最後の最後まで迷った末に決めたもの。値段が大きく変わってくるので、クッションフロアや杉材の選択肢を捨てきれなかったといいます。

(予算を上乗せして選んだ、部屋全体の雰囲気をぐっと高めるオーク無垢材の床。)

壁で迷ったのは、アクセントクロスを取り入れるかどうか。サンプルを見てもなかなかイメージが湧かず、人の家に行ってもずっと壁のことばかりが気になっていたそう。最終的には、最初に「いいな」と思った感覚を信じ、全体を白の壁紙で統一しました。「すごい悩んだけど、白にしてよかった」と振り返ります。

(リビングのシンプルな白い壁に飾られているのは、石上さんのお父さまが描いた絵と、お母さまがつくられた木枠の鏡。)

一方、一目見て決めたのはキッチン壁のタイル。ヘリボーンに貼られたグレーのタイルは、部屋全体の程よいアクセントにもなっていて、石上さんの1番のお気に入りです。

(ヘリンボーン配置で貼るタイルは「職人泣かせ」と嘆かれましたが、完成後、職人さんは「これ、ええなぁ」と気に入っていたそう。)

クローゼットを取り払ってしまったので、収納は元和室の押入れだった場所のみ。ハンガーラックを買って部屋に置くことも考えましたが、「すっきりしたい」という思いを優先して、ここに納まるよう物を減らしました。

(建具は押入れのまま。中にはハンガーバーを取り付け服を収納しやすくしました。)

この押入れの裏側は、ちょうどお風呂の脱衣所にあたります。押入れの一部を借りて脱衣所の壁に設けた小さな収納は、とても重宝しているそうです。

(押入れの裏側を使って設けた脱衣所の棚は、フロッグハウスからの提案)

工事期間中、あまり現場を見に行かなかったという石上さん。その理由は「あんまり見すぎると楽しみがなくなると思ったから」。完成時、カバーを剥がして床全体が見えたときには、想像を超える迫力に「すごい〜!」と連呼したとか。

早起きして掃除をしたり、海を眺めたり。

石上さんの休日は、木・土曜日の午後と日曜。帰りも夜遅いので、家でゆっくり過ごす時間は限られています。そんな生活だからこそ、この家で暮らし始めてからは、早起きをして朝の時間を楽しんでいるそう。

(こんな風に、テーブルからベランダの景色をボーッと眺めるそう。)

石上さん)朝が早くなりましたね。パッと目が覚めて、「外見てみよう」みたいな感じ。「あ、今日はすっごいいい天気やな」とか「雲があるから天気悪いな」とか。ボーッと景色を見ていたら気持ちいいんですよ。早く寝て早く起きて、ゆっくりしています。

前の家ではちょっとくらい散らかっていてもいいかなって思っていたけれど、ここにきてからは朝から掃除するようになりましたね。

(窓からは淡路島や紀伊半島が拝めます。勧められて採用したペアガラスの内窓は、熱だけでなく音も遮るので、嵐の日でも静かに過ごせるそう)

休日は、塩屋に暮らしはじめてから近所で楽しむようになった趣味の登山に出かけたり、塩屋のおいしいパン屋さんへ買い物に行ったり。新しい家でも塩屋らしい暮らしを満喫しています。

リノベーションは、とことん悩んだ方がいい

(廊下の建具は、元のものをそのまま使っています。)

今回のリノベーションに「悩んだ甲斐があった」と、とても満足している石上さん。「後悔しているところはない」と語ります。

石上さん)やっぱり「自分の好きなものを選ぶ」、「自分で考えて決める」っていうのが一番よかったと思いますね。業者さんにお任せモードだと、後から「ここは気に入らないな…」っていうのが出てきたと思うけど、「全部自分がやってる」という感じがしたので。

とことん悩んだ方がいいと思うんです。最初から「こうする」っていう、絶対に外れない自分のルールみたいなものを作っておくと楽だと思いますね。

それが、石上さんの場合は「迷ったらシンプルに戻る」というもの。思っていたよりも決める項目が多く、このルールに助けられたと振り返ります。悩んでは戻ることを何度も繰り返し、今の暮らしをかなえました。

取捨選択がとても上手――。石上さんには、そんな印象を受けました。工事のときに決めたルールだけでなく、インテリアの隅々にまで「好きなものだけを置く」というスタンスが感じられて、本当に居心地がよく、ずっといたくなるお宅でした。

今後は、「お気に入りの家具に出会ったらちょっとずつ足したい」「椅子を増やして友達を招きたい」と、好きなインテリアを足していくのを楽しみにしている石上さん。内装をシンプルにしたからこそ生まれた余白で、5年後10年後どんな風に暮らしを彩っていくのか、私までワクワクと想像を膨らませてしまいます。

<文・写真:村崎恭子>