リフォーム産業新聞に掲載されました
デザイン・性能アップで団地に若年層呼び込む
無垢床の広々LDK、全窓に内窓、ネイビーで統一感
リノベーション協議会(東京都中央区)が主催する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー2025」。800万未満部門で最優秀賞となったのが、団地リノベを得意とするフロッグハウス(兵庫県神戸市)の「市営住宅のあり方を、団地の経験値で解く」だ。リノベーションを行ったのは、芦屋市の市営住宅の一室。予算500万円のなかで工事内容の取捨選択を行い、LDkの間取りがらりと変え、全窓に内窓を設けるなどの性能も向上させた。
性能向上リノベを芦屋市に提案
芦屋市の「大東町住宅」4号棟は、1989年建築の5階建市営住宅だ。エレベーターがないこの団地では、3階以上の空室が目立ち、高齢化率は50%を超えた。そこで芦屋市は若年層の入居率を高めるべく、ファミリー向けの物件のリノベーションを計画した。プロボーザル方式で選ばれたのは、団地再生を多く手がけて来たフロッグハウスだ。別棟の部屋も含む全3戸を各戸500万円、1500万円で工事した。
市から要望されたのは、若年層が入居してくれそうなデザインだった。同社では、子育て世代が使いやすいLDkへの間取り変更とともに、性能向上リノベーションを提案した。清水大介代表は話す。
「これまでに、築年数の経った無断熱の団地で、結露による被害を多く見てきました。表面上綺麗にリフォームするだけでは、数年でカビが生えて、クロスもめくれてきてしまいます。壁断熱と内窓は外せないと思いました」(清水代表)
事例の部屋は築37年と比較的築年数が浅く、幸いなことに壁が薄い断熱材が入っていた。そこで壁はいじらず、5つの窓全てに内窓をつけることで、大幅に断熱性能を高めることができた。
「断熱基準の高い住宅で育った若年層は、断熱性能の低い賃貸住宅に一人暮らしすると、寒さで音を上げてしまうと聞きます。基本性能をしっかりさせることは、入居率を高める事にもつながるはずです」(清水代表)
併せて行ったのが24時間換気の設置と、お湯が通っていなかった洗面とキッチンへの急湯管の敷設っだ。バランス釜だった給湯器は、ガス効率の良いエコジョーズに印新。
キッチンには節湯型水栓を採用するなど、住まい手のメリットとなるランニングコストにも配慮した。
既存ドアや収納扉をネイビーでシックに
LDKは、既存のDKと和室をつなげ、壁付きを対面キッチンに変えて、子供を見守れる広々とした空間になった。リビングの床で採用したのは、裸足で過ごしがちな子供の足にも優しい兵庫県産杉の無垢材だ。
「無垢のフローリングは傷も味になるし、表面は削ればメンテンナンスできてしまうから、入居者が入れ替わるびに張り替える必要がありません。初期費用がかかるだけで長い目で見ればコストをかけずに回していける材料なんです」(清水代表)
その他の部屋や水回り、収納などの配置は変えなかった。だが、各室の既存のドアや収納を生かしつつ、色を共通のネイビーに塗り直すことで、統一感のあるショックなデザインにまとめた。
例えば洗面室では、原状回復時に設置されていた洗面台を活用。ただし、このままでは収納量が足りないため、横に可動式の棚を造作した。そして、背面をネイビーのクロスにする事でデザイン性もアップさせた。
「500万円という限られた予算の中で、全てを新しくする事はできません。でも、LDkだけでも新しいもので固めて、他はそのままというのでは住まい全体のバランスが整わない。既存で生かす部分と新しくする部分を、バランスを考えて決めていきました」(清水代表)
施工して2戸に募集をかけると、すぐにファミリー層の入居が決まっていきました。芦屋市では、今後も大東住宅でファミリー向け物件のリノベーションを進めていきたい意だ。実は2026年度も、プロポーザル形式でフロッグハウスが選ばれ、すでに新たな3戸に着手している。
「暮らしの質の向上をテーマに、またプランをつくりました。無垢材のカウンターなど、新しい要素も盛り込んでいます」(清水代表)



